Love Birthday‥~約束~
診察室に向かって頭を下げた髪の短い女性が、こっちに向かって歩いてくる。
その後ろを車椅子に乗った男の子が、不機嫌な顔で車椅子を漕いでいた。
「お父さん、お知り合い?」
河相さんと、俺と中嶋先生の顔を交互に見ながら河相さんの娘さんが言った。
「わたしのリハビリをしてくれた先生たちだよ」
「あら、そうなの?
父がお世話になりありがとうございました」
深々と頭を下げる娘さんに、俺と中嶋先生は頭を下げた。
「診察はどうだった? 問題ないか?」
「ええ、特に問題は無かったわ。
私、会計を済ませてくるわね」
河相さんの娘さんは笑顔で小さく頭を下げ、事務室の方へ行った。
「よかったな」
河相さんの言葉に、車椅子の少年は「だからなんともないって言ったのに」とぼやいた。
その姿を愛おしそうに見る河相さん。
実習の時に孫の話をしていた河相さんの表情と同じだった。