Love Birthday‥~約束~
「今の河相さんにとって一番大切なことは、全身を動かし筋肉の衰えを防ぐことと同時に、
元の生活に近い状態で自立した入院生活を送ってもらうことだと思います」
私の考えを耳に入れても、看護部長はカルテから目を逸らさなかった。
「そんなこと、私にもわかります。
今、河相さんが歩行中に間違って転倒することにでもなったらどうなる?
年齢を考えると、また骨折することは間違いないわ。
そしたらまた手術をして、今以上に入院が長引くことになるでしょ。
もう少しリハビリをしてから松葉杖の歩行を開始して下さい」
看護部長の言葉の後、一呼吸置いてもう一度口を開いた。
「確かに河相さんが転倒したら骨折すると思います。
けど、今の河相さんは一生懸命リハビリを重ね、松葉杖で歩行できるだけの筋力が身に付いています。
本人のリハビリへの意欲も強く、このタイミングで松葉杖での歩行を始めることが大切だと思います」
毎日一生懸命リハビリをしている河相さん。
歩けるようになることを、心から望んでいる。
その思いを受け取り、一生懸命河相さんの力になろうとしている吉田君。
何度もレポートをやり直し、細かいことまで気を使って治療に専念している。
そんな二人を毎日見てきたから、私は自信を持ってはっきりと看護部長に意見することが出来るんだ。