Love Birthday‥~約束~



その日一日は、自分の担当患者さんのリハビリをしながら、吉田君の存在を確認していた。


彼はどんなふうに患者さんと接するんだろう……。

彼を試すように少し距離を置いて見ていた。




「吉田はどんな感じだ?」


夕方、スタッフルームに戻った私に緒方科長が声をかけた。



「とても自然に患者さんに接しています。
明日から患者さんを一人見てもらおうと思います」

「そうか」



彼の接し方は本当に自然だった。

今までの実習生はぎこちないというか、患者さんをガラスのような視線で見て、どこか恐れているものがあった。

彼にはそれがない。

それどころか笑顔を向けて、患者さんの中に入っていこうとしている。

患者さんの体だけでなく、心の中に……。



「学生に惚れるなよ」

遠くにいる彼を見ていた私の耳元で緒方科長が囁いた。


ドキッとした私は、自分の胸に聞いてみる。


今の反応は

緒方科長の息が耳にかかったから?

それとも、緒方科長が言ったことが図星だから……?








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