ビタービターチョコレート
ちなみに、先生と呼ばせているのは、研究者で科学者だから。

「蒼子ちゃん。
春に行ったパスタやさんって、この近くだっけ?」

「はい。確か、そのはずです」

「じゃあ、そこにしようか?
季節も変わったことだし、新メニューも出ているはずだから」

「……わかりました」
 
うきうきと歩き始めた先生のあとを、ため息交じりの息を吐き出して私は追った。


先生は会社でやってる研究も変わってるけど、人間も変わってる。
科学者の癖に、人間観察が趣味だ。
その一環として、こうして、休みになると私をたびたび呼び出す。

……私の気持ちなんか、ちっとも知らずに。
 

はっきりいって私は、このかなり年上の男が好きだ。
きっと一年前に配属になったときから。

どこが好きなのか聞かれると困ってしまうが、たぶん未だに、この少年みたいに無邪気なところが、好きなんだと思う。
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