ビタービターチョコレート
……お願いだから、奥さんに聞いて欲しい。

笑顔を絶やさないように気をつけて、無難な方を選ぶと、先生は嬉しそうにそれを買いにいった。

ほんとに、手を繋いでないのが不思議なくらいな感じで、先生はしきりと私に、
「蒼子ちゃん、蒼子ちゃん」
と呼びかける。

……とっても嬉しそうに。

きっと、先生からしたら、娘とでもデートしている感覚なんだろう。

そのうち歩くのに疲れて、お茶することにした。

喜々としてテラス席に座って道行く人を観察しては、先生は楽しそうに話してる。
それを見てるのはとっても嬉しいし、……とっても悲しくなる。


楽しくてつらい時間はあっという間に過ぎていき、お店を出るともう夕方になってた。

「……蒼子ちゃん」

「……はい」
 
人気のない公園の木陰に入ると、私たちは……キスをした。
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