ビタービターチョコレート
感情のこもってない、ただ唇を重ねるだけの、キス。
好きだ、愛してるって感情はもちろん、肉欲的な感情すらない。

だって私は先生に、自分の感情を悟られる訳にはいかないのだ。

「……うん。
じゃあ蒼子ちゃん、また会社で」

「はい。また、月曜日」
 
私から離れると、先生が少し笑った。

……奥さんへの罪悪感の混じった、淋しそうな笑み。

あんな顔するくらいなら、私とキスなんかしなきゃいいのに。
 

先生から初めてキスされたときは、訳がわからなくて混乱した。

ただ、
「僕の個人的研究だから。
嫌だったら次から断って」
そう、いわれた。

けど、嫌じゃなかったら、次からも断らなかった。

むしろ、最初のうちは嬉しかった。

でも、最近は……ただ、虚しいだけ。
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