ビタービターチョコレート
キスするたびに、先生と私との距離を、再確認してしまうから。


「……はぁーっ」
 
家に帰って、またため息。

もう最近、ため息しか出てこない。
ため息をつくと倖せが逃げる、とかいうけれど、きっとため息ばかりついている私には、逃げるどころか寄ってもこないだろう。

ずっとマナーモードにしていた携帯を見てみると、母親から電話が入ってた。

いわれることはなんとなくわかりつつ、ほっとくともっといわれるのが鬱陶しくて、嫌々折り返しの電話をする。

「もしもし、お母さん?
いつもの話なら……」

『蒼子、あんた、お見合いする気、ない?』
 
人が話し終わらないうちに、母親の口から出たのは、案の定のいつもの言葉。

「だからー、いまは仕事が忙しいから、結婚とかそういうのは、」

『そんなこといって、もう来年は三十歳じゃない?
お隣の由美ちゃんだって、春には子供が生まれるのよ?』
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