難あり編集者と極上に甘い結末

 知代さんは、大学時代から付き合っているという彼氏がいる。約十年の交際を経てやっと念願の結婚を果たす彼女は今、言うまでもなく幸せでいっぱいだろう。

 そんな彼女とひとつしか変わらないというのに、結婚どころか彼氏すら三年もいない私は、もはや焦りを通り越して、“そろそろ諦めるか”なんて思い始めていた。

「沼川さんは、私よりも年下なんだからこれから婚活でもすればギリギリ間に合うと思いますよ。それに、晩婚化の時代ですしね」

「そうですね」

 白い歯を見せて悪戯に笑う彼女。彼女なりの励ましの言葉に、私も口角を上げて笑った。

「あ、それで、次の担当者っていうのが…」

 はっと、何か重要なことでも思い出したように口を開いた知代さん。そんな彼女の言葉を遮るかのようにテーブルの上に伏せてあったスマートフォンが震えた。

「あ、仕事の電話だ。ちょっと出てもいいですか?」

 私が頷くと、彼女は両手を合わせ「ごめんなさい」と言い席を離れた。

 なんとなく窓の外を眺める。慌ただしく行き過ぎる人と、快晴の空を見ながら、私は次に何を書こうかと考えた。

 もともと恋愛を主にした小説を書くのが好きで、そういう書籍ばかりを出版していた私は、最近他のジャンルにも挑戦するようになった。推理、ミステリー、SF。でも、どれもしっくりこない。得意としていた恋愛というジャンルでさえ、最近では書籍を出せば厳しい評価だ。

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