難あり編集者と極上に甘い結末

「は……?」

 私は、唖然とした。

 今、彼は、私の聞き間違いでなければ〝俺に、恋をしてみたらいい〟と言った。

 これは聞き間違い? そうでなかったとしたら、この人の頭は一体どうなっていて、どういうつもりでそんな言葉を発したのだろうか。

 彼の思考が読めず、また、返す言葉も見つからない。私は、ただ黙って彼の次の言葉を待っていた。


「聞こえた? 聞こえてないならもう一度言うけど」

「え、〝俺に、恋をしてみたらいい〟って台詞をですか?」

「なんだ、聞こえてるじゃん」

「いや、聞こえてましたけど……」

 どうやら、私の聞き間違いではなかったらしい。

 彼は、仮にも私の担当編集者だ。どうしてそんな彼が、作家である私に、こうも平然とそんな台詞が吐けるのだろうか。

「何、異論なら一応受け付けるけど」

「異論というより、普通に考えてあり得ないですよね。貴方、私の担当じゃないですか。普通、平然とそんなこと言います? からかってるのならやめていただきたいです。大体、今時、一般の人でもそんな言葉言わないのにどこの俺様キャラですか」

 まるで、小説や漫画の中からそのまま引っこ抜いてきたような台詞。確かに、私の作品にもいくつかそんな台詞が散りばめられているけれど、こんな台詞を、まさかこの現実世界で聞くことになるとは。
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