難あり編集者と極上に甘い結末
“最近の沼川千草の恋愛小説は、つまらない” “バッドエンドばかりだ” “前の作風が好きだった” なんて、そういう評価をネットでよく目にする。
もちろん、みんながそう言っているわけじゃない。今も変わらず読んでくださっているファンの方も少なからずいるし、応援の言葉だっていただく。
ただ、作風が変わったのも、重たいバッドエンドな恋愛話しか書かなくなったのも言われてみれば事実だ。
ここ数年で変わってしまった私の作風。その原因として、思い当たる節は一応ある。乗り越えたつもりでいるけれど、実はまだ引きずっているのかもしれないな、なんて思いながら私はため息をひとつ零した。
「沼川さん!」
「どうしました?」
「ちょっと、急遽仕事先戻らなきゃいけなくなりまして……あの、新しい担当者の事なんですけど、担当から連絡させますね!またゆっくり話しましょう!」
「え、あ、はい」
余程の急用なのか慌ててバッグを取り去って行った知代さん。私は、そんな彼女の背中を見送り、しばらくすると店を出た。