難あり編集者と極上に甘い結末
私はそれから約一時間、岩崎さんに指摘を受けた部分を修正するという作業を続けていた。
「はあ、疲れたぁ」
第二章中盤までの修正を終え、ついに集中力を切らしてしまった私は、パソコンのキーボードから手を離すと、椅子の背もたれに上半身の体重をかけた。
「指摘したい部分はまだまだあるんだけど……ま、いいか。少し休もう」
岩崎さんは、そう言うと少し離れた場所にあるソファーに腰をかけた。
ソファーに腰をかけた彼は、ぐっとソファーの背もたれに体重をかけると瞼を閉じた。私はずっと座っていたけれど、彼は一時間以上立ちっぱなしで指摘をしてくれていたのだ。そりゃあ、疲れただろう。
私は、そんな彼の姿を横目にもう一度パソコンと向き合い、モニターを見る。
彼に指摘やアドバイスをされ、修正した箇所は、明らかに修正する前よりも良くなっている。
普通の担当者ならここまではしないだろう。本当なら校閲の方がする仕事だし、そもそも、出版の決まっていない小説だ。それをこうして見てくれるのは、素直に有難い。
私は、席を立ち上がると、キッチンに足を運んだ。そして、グラスにオレンジジュースを注ぐと、彼の座るソファーの前にあるテーブルへ置いた。