難あり編集者と極上に甘い結末
「ここ、誤字。ちょっと漢字間違いとか変換ミスの凡ミスが目立つかな」
数日で、流れるようなスピードで書き上げたせいか、いつもより誤字が目立つ今回の作品。また誤字を見つけて、平然と、棘でも流石のように指摘されるんだろう。そう思っていた私の予測は見事に当たっていた。
昨夜、バイト終わりに岩崎さんから〝明日、また作品の修正しに行きます。〟と連絡があった。彼は、夕方まで別件の仕事があったらしく、20時を回った頃にやって来た。
「すみません」
私は、彼に指摘された箇所を大人しく打ち直し、溜息をこぼす。彼は、そんな私のことを見て小さく笑いながら、パソコンのモニターに視線を移すと、物語の続きに目を通し始めた。
「あ、はい。ここも」
「あ、すみません」
「うん、そう。オッケー」
淡々と進む変換ミス等の誤字修正。誤字を指摘されては、修正。また指摘されては、修正。そんなやりとりの中で、突然彼が「これ、相当急いで書いたでしょ」と言って優しく笑った。
「どうしてですか?」
「いや、なんとなくね。あんまりこういうミス沢山重ねるタイプに見えないから、急いで書いたか、ハッピーエンドに気を取られすぎたのかなと思って」
ベテランの勘、当たるでしょ? と自信気な彼を横目に、私は素っ気なく「そうですね」と返した。彼は、私の素っ気ない返事に何も感じないのか、平気そうにまだ口角を上げている。