難あり編集者と極上に甘い結末
街はずれにある小さなアパートの二階。一人暮らしをしている自宅に戻った私は、早速パソコンと向き合った。
キーボードに指先を置き、以前書いていたようなハッピーエンドの恋愛小説を書こうと試みる。
恋愛小説を書くときに重要なのは、心理描写。読者の心を動かし、高鳴らすような言動とシーン。それから、共感。
ファンタジーでもなく、ラブコメディでもない。いつも、自分と変わらないアラサー女子を主人公として、夢がありながらもそこらへんにも落ちていそうな恋をテーマにしている私。そんな私にとって、読者の心をつかみ、動かすようなシーン。それから、共感を得ることはとても重要だと思っている。
しかし、恋人はもう既に五年もおらず、その間好きな人すらいなかった。五年前にいた恋人とは、酷い別れ方をして未だに引きずっている。そんなブランクのようなものを抱えた私は、ハッピーエンドのつもりで恋愛小説を書き始めても、最後は結局バッドエンドで終わらせてしまうようになったのだ。
はあ、と大きく溜息を吐く。こんな事を考えていても仕方がない。そう気持ちを切り替えた私は、ひとまず軽くプロットを立てると、指先をキーボードの上で滑らせ、物語を創りはじめた。