難あり編集者と極上に甘い結末
書き始めは、〝私は、約五年ぶりに恋をした。それは、それは、艶やかに熟した果実のようにあまずっぱく、ときどき苦い。そんな、恋。〟
三十代のOLと、四十歳の会社の上司の恋。私は、そんな物語を指先でどんどん綴り出した。
カタカタカタ、と部屋にはキーボードを打つ音が小さく響く。
気がつけば、一時間、二時間と時間は経過していて、ふと窓の外を見ると陽は既に沈み始めていた。
「今日はここまで、かな」
私は、キリの良いところで手を止めた。そして、パソコンの電源を切ろうとしたその時、右下に小さなメールマークを見つけ、受信したメールを開いた。
そのメールアドレスというのが、登録のしていないメールアドレスで、誰だろうと首を傾げたがメールの件名を見た瞬間、私は「ああ」と声を漏らしながら納得をした。
件名の部分には《五月より担当になる岩崎です》と書かれている。私は、そのメールの本文に目を通す。メールには、自己紹介と、担当になることに対しての挨拶。それから、来週挨拶に伺うという文が並べられていた。
私は、そのメールに返事をすると、パソコンの電源を切り、椅子から立ち上がった。