難あり編集者と極上に甘い結末
岩崎さんの言う〝新しい恋〟というのが誰のことを指しているのか。それは、すぐに察しがついた。聞かなくとも自分で、分かってしまった。
彼にキスをされたとき、苦しくて涙が出た。
理解できない、苦手な人のはずなのに、どうしてか私は彼といる時間が嫌いじゃなかった。
「まぁ、ゆっくり考えてみて。あとこれ、来月開催されるイベントの詳細。見ておいて」
「はい。ありがとうございます」
岩崎さんが、一枚の白黒用紙をデスクに置いた。そして、私に背を向けると玄関の方へと歩いて行く。
私は、彼の背中を見送る事はせず、背中から聞こえてくるドアの閉まる音を聞いていた。