難あり編集者と極上に甘い結末
───私は、彼のことが好きなのかもしれない。
私は、あの岩崎さんに恋をしてしまっているのかもしれない。でも、恋をしているとしたら、私はこのまま彼と仕事を続けられるのだろうか。取り返しのつかない事になる前に彼と離れなければ、また、あの時のように苦しい思いをしてしまうんじゃないだろうか。
もう既に苦しいというのに、これ以上自分を苦しめる場所に足を伸ばすのは、この歳になるととても怖い。
私は、何度も自問自答した。自問自答して、正しい答えは何なのか。自分が抱くこの感情のやり場をひたすら探した。
だけど、そんなものはいくら考えても見当たらない。
「───さん、如月さん」
「あ、はい!」
はっとして我に返る。すると、私のことを心配そうに覗き込んでいるオーナーの顔がそこにあった。
「大丈夫? 今日、調子が悪そうね」
「え、いえ!大丈夫です」
慌てて笑顔で返すと、オーナーは目の前で「そう?」と首を傾げた。私は、大きく一度頷いて返事をする。
「それならいいんだけど、貴方、もう上がりの時間過ぎてるわよ。だから知らせにきたの」
「あ、本当だ」
レジ画面の隅っこに映されている時刻を見る。すると、そこには〝20:09〟と表示されていた。