難あり編集者と極上に甘い結末
須賀くんと他愛もない話をしながら、仕事を進めること約四時間。気付けば、仕事上がりの時間になっていた。
「23時なので上がります」
「あ、如月さん、お疲れ様です」
須賀くんに一言を残し、バックルームに入る。制服を脱ぎ、ロッカーにしまうと、私はコンビニの外に出た。
外に出ると、なんとなく左に目線をやる。灰皿の側に誰もいないことを確認した私は、ほんの少しがっかりして肩を落とした。
そんな私の背後に、何となく気配を感じる。お客さんがドアから出てきたのだろうかと思い振り向くと、そこには、私が数時間前にレジをした、色白の中年男性がいた。
「あの……」
いつも成人雑誌を買っている常連さん。彼は、ゆっくり、ぼそりと呟くように言葉を発した。
「はい」
「あなたは……最近、ここでアルバイトを始めたんですよね」
「はい。そうですけど……」
俯いていた男性が、ふと顔を上げる。その瞬間に目が合ってしまい、私の背筋はぞくっと凍りついた。
その瞬間から、私の中に恐怖心が芽生え始めた。この恐怖心の理由がなんなのかは分からないけれど、少しだけ怖くなってしまった。
「僕、貴方を見に最近よく通ってるんです……覚えてくれてますか? あと、あそこでアルバイトをしているということは、ひょっとして、この辺りに住んでるんですか?」
声がうまく出せなくて、手が震える。
どうしよう。私、どうしたらいいだろう。停止してしまいそうな思考をフルに回転させ、私はどうするべきかを考えた。
「……すみません。私、急いでるので失礼します」
小さく頭を下げた私は、くるりと半回転すると足早に家路を歩き始めた。歩き始めて間もなく、背後から聞こえて来る微かな足音。その足音は、私の歩くスピードに合わせているかのようにリズム良くなっていて、私の視界は、恐怖から段々とぼやけ始める。