難あり編集者と極上に甘い結末
しばらく泣き続けていた私を、岩崎さんは、ただただ抱きしめて宥めてくれていた。
「……岩崎さん」
そっと、岩崎さんの胸にくっつけていた額を離す。少しだけ岩崎さんと距離を開けると、岩崎さんは心配そうな顔をして私を見ていた。
「なに?」
「ひょっとして……最近、ずっとお店の前で待っててくれてたのって……あの人のこと、気づいてたんですか?」
私の勘違いかもしれない、と一瞬は思った。だけど、そんな訳がない。自意識過剰かもしれないけれど、きっと、彼が私を迎えに来てくれていたのは、偶然なんかじゃなかったと、そう思う。
「まぁ、気づいてはいたかな。初めてコンビニで君と会った時も、あの人、コンビニの外から君のこと見てたから。逆にさ、如月さんは気づかなかったの?」
「え……全然」
私がそう答えると、岩崎さんが溜息を一つこぼした。
「君、普段はしっかりしてるのにさ。そういうところ抜けてるから放っておけないんだよね」
「抜けてるとかじゃなくて……だって、私、31歳ですし……」
31歳の枯れかけた女を、誰が狙うというのか。そんなの、誰だって想像すらしないだろう。
そう考えていた私の思考を読み取ったのか、岩崎さんはまた大きく溜息をついた後口を開いた。
「ばか。年齢とか関係ない。魅力があれば何歳だって関係ないでしょ」