難あり編集者と極上に甘い結末
鍵を開けてドアを押し開けた。開くドアの向こう側にいたのは、黒いスーツを着こなした見知らぬ男性だった。
癖のようなウェーブのかかった黒髪。前髪はふわりとセンターで分けられていて、パーツの整った淡白な顔。そんなお兄さんこ口から、どうしたことか「なんだ、思ってたより全然可愛い」と発せられた。
「え、あの、どちら様ですか」
配達のお兄さんでなければ、友人や知り合いでもない。それなら、保険の勧誘か何かだろうか。
ひとまず、さっきお兄さんの口から発せられた言葉は幻聴だと思うことにした私は思考をぐるぐると回転させ、目の前にいる彼が誰なのかを予想した。しかし。
「五月から担当になります。岩崎徹です。よろしく、沼川千草先生」
「え……ええっ⁉︎」
突然我が家を訪問し、目の前で不敵な笑みを浮かべるこの男は……全く予想さえしなかった担当編集者だった───。