難あり編集者と極上に甘い結末
「───聞いてないんですけど」
翌日。私は、自宅に知代さんを呼び出すと、彼女がソファーに腰をかけるなりすぐに口を開いた。
私が何を理由に呼び出したのかを察していたらしい知代さんは「あはは」と苦笑いを浮かべた後、ゆっくり口を開く。
「この間、言おうと思ったんですけどね。いいタイミングで会社に戻らなきゃいけなくなったもので」
そこからバタバタしてて言うタイミングが、と、知代さんは決まりの悪そうな表情を浮かべた。
「知代さんから担当が変わるのは仕方がないとしても、どうして男の人なんですか」
ため息まじりにそう発した私に、知代さんは眉尻を下げた。
「私も知った時点で上に交渉してみたんですけど、もう今期の部署異動も完全に済んで、担当も決まってしまってて、どうしようもない状態で」
事情を知っておきながら力になれず申し訳ないです、と付け足した知代さんに私は「ううん。知代さんが悪いわけじゃないのにすみません」と返す。
「まあ、もうあんな事にはならない……いや、絶対しないですし、なんとか頑張ります」
申し訳なさそうにしている知代さんをこれ以上追い込みたくなかった私は、無理矢理口角を上げて笑った。