難あり編集者と極上に甘い結末

 ───翌日。

 私は拓未から受け取った名刺に記載されていたアドレスに連絡をし、拓未の仕事終わりに、二人で何度も行った居酒屋で会う約束をした。

 私は、懐かしい居酒屋の暖簾を前に、小さく深呼吸をした。

 あの頃、お酒を飲むことを楽しんでいた私は、ここで彼に告白をして、自ら彼に捨てられてしまうような原因を作った。

 すごく、すごく、後悔した。

 本当に好きだったのに、お酒の力を借りなければ伝えられなかった。何かの力を借りずに気持ちを伝えられない私のせいで、私は、彼にも、自分にも傷をつけた。

 だけど、その後悔も今日で終わり。


───ガラッ

「いらっしゃい」

 私は、引き戸に手をかけた。目の前に広がった懐かしい景色の中には、私が大好きだったあの人の後ろ姿があった。


「お連れ様ですか?」

 私達が通っていた頃と変わらない大将が、拓未の背中に視線を向けながらそう言った。

「はい」

 私は小さく頷き、彼の背中へ向かい歩いて行く。


「お疲れ様」

 彼の向かい側の席の椅子の背もたれに手をかけ、そう発する。拓未は、優しく笑いながら私と同じように「お疲れ」と返した。

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