難あり編集者と極上に甘い結末

 今から七年前。沼川千草として書籍デビューすることになった私の初めての担当になったのは、背が高く、いかにも真面目そうな眼鏡をかけた男性だった。

 彼に支えられながら、なんとか無事デビューを果たし、その後も彼とともに沼川千草として作品を書き続けていた私。

 基本的にインドアで、外に出るのを面倒だと思う私に合わせて家まで訪問してくれていた彼。そんな彼と過ごす時間は、友人や家族といるよりもずっと多かった。

 そして、真面目で、優しくて、仕事熱心な彼と日々を過ごしていくうちに、私は担当であるはずの彼にどんどん心惹かれていってしまった。

 仕事のパートナーなのに、惹かれてしまってはいけない。こんな気持ちは消してしまわなければ。そう思えば思うほど、私はその気持ちを止められなくなっていった。

 そして、そんなある日。彼と居酒屋で飲んでいた私は、酔っ払ってしまった勢いで「好き」だと告白をしてしまった。

 その時の私は、泥酔というわけではなく、ほろ酔い程度だった。だから、ちゃんと意識はあった。私の目の前にいた彼は、私の言葉に驚きながらも首を縦に振ってくれた。

 それからの私達は、仕事はもちろん、プライベートでもパートナーとして毎日を一緒に過ごした。彼はもう、殆ど私の家に泊まり込むことが多く、同棲してるも同然で、私達は、本当にいつも一緒にいた。

 それだけ毎日を一緒に過ごしていたというのに、私は彼の嫌な部分を見つけるどころか好きなところばかりが増えていて、このまま私達は結婚するんじゃないか、結婚するならこの人だ、なんて、勝手に思っていた。

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