おいしい話には裏がある
バイトって…最初から、私にさせるつもりでうちの怖いお母さまに話したんじゃない。

断る隙も与えないように、内容は前の日まで伏せて。

はぁ…。

心の中でため息を吐いた。

おっきな襖の前までやってきて、朔ちゃんは「組長、失礼します。」と言って抱っこのまま、開けて中に入る。

『朔ちゃん、降りるよ?』って言ってるのに、完璧無視。

部屋の中には理一くん、さっきも話した岳くん、若い男の人が三人、プラス幼稚園位の男の子が一人。

抱っこで入ってきたからでしょう。

知らない男の人達は唖然としております。

「こらっ、朔!雪杏降ろせ!何、抜け駆けしてんだお前!」

理一くんの場違いな声。

「イヤです。いつも組長ばかりでたまにはいいじゃないですか。」

勝ち誇った顔で、私を抱っこしたまま。

「雪杏、来いっ。」

手招きする理一くん。

私は朔ちゃんに降ろしてもらい、目の前に座る。

『理一くん、お久しぶりです。お見舞い行けなくてごめんね。夏休みでフランスに留学してたから。元気そうでよかった。』

「理一くん?!」

若い男の人が悲鳴のような声を出す。

「炎、うるせぇ。」

理一くんによく似た男の人が、炎さん?にキレてる。

「雪杏、オレの息子の嵐瓏(あろう)だ。で、となりの双子が嵐瓏の側近の炎(えん)と昴(すばる)。ちっこいのが年の離れた嵐瓏の弟の桔梗(ききょう)。で、この子が羽山雪杏だ。」

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