佐倉小花の幽愛白書
 
 一方、佐倉はそんな私の様子に何も動揺することなくいつもの無表情で真っ直ぐにこちらを見つめている。


「な、な、急に何の冗談だ!?」


 とうとう教師としての落ち着いた口調に気をつける余裕すらなくなり、動揺丸出しで彼女に問いただす。


「今度は冗談などではありません。私は本気です」


 

 顔の筋肉を一つも動かしていないような彼女の能面はとても本気で愛の告白をしている表情には見えない。


「先生に現在お付き合いしている女性がいないのはリサーチ済みです。ですから私とお付き合いして下さい」


「何だその滅茶苦茶な理由付けは!」


 というか私の情報を一体どこからリサーチしたというのだ。むしろ私の冴えない風貌をみれば調査などせずとも恋人がいないことなどすぐに解りそうなものだが。


「無茶苦茶とは何ですか。先生も先程私の事を好きだと仰っていたではないですか」


 大きくはっきりとした声で他人に聞かれるとまずい発言をするのはやめて頂きたいものだ。
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