佐倉小花の幽愛白書
「相談というのはそれだけかい?」
「いえ、まだいくつかお聞きしたい事があります」
この生徒は私をストレス死させるつもりか。
「すまないが後で職員会議があるんだ。出来れば手短に頼むよ」
もちろん職員会議など嘘っぱちだがこれ以上は私の腹が限界なのでこのおしゃべりをさっさと済ませてしまおう。
「では私の質問にイエスかノーで答えて頂くだけで結構です」
それはありがたいな。
「1問目、先生は身長の高い女性が嫌いではない」
「急に何だその質問は?」
「イエスかノーで結構ですよ」
「むっ、まぁ嫌いでは無いからイエスで」
何故ピンポイントに私の好みの質問なのだ。
やはり私には佐倉小花が何を考えているのかさっぱり解らなかった。
「2問目、先生は黒髪のロングヘアが好きだ」
「髪型に特に拘りはありません。まぁ黒髪は日本人らしくて良いと思いますが」
「成程、女性の髪を撫でられればどんな髪型でも良いと言うことですね」
「全く違います。誤解を招く言い方をしないように」
生徒の前ではなるべく落ち着いた喋り方を心がけている私だが、いい加減に素が出てしまいそうだ。
それにしても本当に何なのだこの質問攻めは。
「3問目、成績が優秀な生徒が好きだ」
「イエスです。教師として立派な成績が残せる生徒は嫌いではありませんよ」
まぁ本音を言えば生徒全員優秀であれば追試の問題を作らなくていいからなのだが。
「最後の4問目、料理や家事の出来る女性が好きだ」
「あの、佐倉さん。さっきからこの質問は一体――」
「回答はイエスかノーです」
「どっ、どちらかと言われればイエス……」
こうして全ての質問を終え、彼女はどこか満足したように一度頷いて手に持ったコーヒーを全て飲み干した。
質問攻めから開放された私も佐倉につられる様にコーヒーを口に運ぶ。
「では先生。私と結婚を前提にお付き合いしてください」
私はプロレスで毒霧を吐くが如くの勢いで盛大にコーヒーを吹き出した。