大阪感情線
a.m.9:00
仕方なく西尾氏の件を承諾した旨を伝えると、澤井課長はいつになく嬉しそうに笑った。
「そうか、そうか。受けてくれたか。聞けば何でも向こうさんは『世界をはべらす女王さまの輝き』ってキャッチコピーらしいな。どうだ?一人はべらせてみないか?拾いもんなんだが…」

拾い物?
何の話かもよく分からないままに連れていかれた応接室で私はなんだか見てはいけないものを見てしまった気がした。

そこには少年…いや、そう呼ぶには大きすぎる。けれどどこか幼さを残した青年が炬燵の真ん中で昼寝する猫のように、幸せそうな顔でねていたのだ。


「公園で拾ったんだ。全くしょうもないヤツなんだが、まぁしかし顔と口だけは達者だから、なんかの役に立つかもしれんと思ってな。そうだな…猫か犬だと思って飼ってみてくれないか?ちゃんと飼育費用は払うからさ。おい!奏介、起きろ!」


この猫は「奏介」と言うらしい。内山奏介。
公園に落ちてたと言うから捨てネコかと思ったが、どうも澤井課長の親戚で大学卒業後フラフラしていたらしいのだが、ちょうど昨日公園に落ちていたので連れてきたらしい。


私に捨て猫を拾う習慣はない。出来れば断りたいところだが、確かに顔立ちは整っている。西尾氏が押しつけてきた取引先の女社長は一週間前に売れっ子の二枚目俳優と噂になったばかりの人物だ。
が、目の前にいるネコはあの俳優よりずっと整った顔だと思う。考えようによれば、これは使えるかもしれない。


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