an HappyBirthday letter

「多重人格者、、、?」

私はキョトンとして言った。

「そうだよ。
お前は"2つ"の人格を持っている。
1つは今のお前。すっとぼけてて、馬鹿みたいに優しいお前だよ。」

そう言って咲真くんは微笑んだ。

「2つ目は、執着しすぎてしまうお前だ。」

執着、、、、?わたしが、、?
確かに私は昔友達がいなかったこともあって、
友達に少し特別な思いがあるのは確かだ。
でも執着なんて、、。

「お前が5歳の頃。人に関心を持たないお前を心配した両親は友達になればと養子を引き取った。
そいつの名前が"宇佐神 弥生"だ。」

私は思わず口を開けた。

「よ、養子なんて!!!」

咲真くんは私の方にそっと手を添えた。

「よく聞け。
お前と弥生は直ぐに仲良くなった。
だがらお前は"その"弥生に、執着してしまった。
弥生がほかの子供と喋れば泣きわめいて怒った。
それは手をつけられないほどな。
だから、お前の父さんはアンドロイドを作った。
弥生を守るため。」

「効果は抜群!弥生が危ない時はアンドロイドが仲裁にはいった。両親も安心した。
しかしその油断が事件を起こした。」

私は咲真くんが言う言葉があまりにも、自分が持っている記憶とかけはなれていて戸惑った。
だけど、聞かなくてはいけないものだと、そう直接頭に聞こえてきた。


「お前と弥生が寝たあと、お前の父さんは少し調子が悪くなったアンドロイドを修理していた。
お前の力が強いもんだから。
ちょっと壊れてたんだなあ。」

また咲真くんは微笑んだ。今日はよく微笑むなあ。

「そしてあと少しで終わる時、弥生の叫ぶ声がした。
お前の父さんが駆けつけた時にはもう、手遅れだった。弥生は悲惨な姿で倒れていた。その横でお前は立ちすくんでいた。」

「父さんはお前に問いかけた。なにしたんだって。
そうしたらお前はこう答えた。」

「ピエロがやよいをつぶしちゃった。ってな。」

私は全身が凍っていくのを感じた。
まさか、まさか私が殺ったなんて、、、!

「それから父さんはアンドロイドを作り続けた。
家庭に顔を出す暇もないくらいに。
そしてひとつの町を作った。
町と言っても小さな小さな町だがな。
資金は国にアンドロイドの技術貢献することで得ていたらしいな。」

「そうして弥生を作り続けることで、これ以上自分の娘を殺人者にすることを避けてきたんだろうな。」

私は叫んで泣いた。あまりにも悲惨すぎる真実に。
信じたくなかった。
だけど、あの日のピエロを殺した感触がまだあるのだ。私の手に。あれは弥生だったのかな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「きゃあ!!!!!!!」

弥生はそう叫びながら、自分の部屋へ逃げた。

弥生の家に手紙が届いた時から察してはいた。
もう弥生としての私は終わるのだと。

思い返せば私は今までの弥生より、長く弥生でいられた。

それは、環奈に友達としてではなく、性的な感情を私に持たせるように仕向けたからだ。
私の思惑通り、環奈は私に想いを寄せた。


でも私はある先輩に恋をしてしまった。
いつも環奈のことだけを思って行動してきた私には、先輩が私のことを思って行動してくれるのはとても幸せに感じたのだ。

だが、そんなことも環奈にバレてしまった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ある日環奈に家に呼ばれて行くと、そこには背中から血を出している先輩が倒れていた。
私は驚いた。この町にはアンドロイドしかいないはず。弥生以外には血なんて組み込まれていないはず、、!なんで血が出ているのかと、、。

そうか。お父さんはそこまで考えていたのか。
私は少し考えて気づいた。
あえて私に好意を向けられるアンドロイドを作り、そのアンドロイドを娘が殺すように仕向け、私が長く弥生でいられるようにしたのね。

「あ!弥生!!!もうコイツあんまりにもしつこすぎるからさ!殺してあげたよ!!!」

そういった環奈を見て私は気づいた。
私はただ弥生として生きていくのではない。
"環奈の"弥生としてしか生きていけないんだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

弥生がそう考えていた時
環奈が部屋に入ってきた。

はあはあ息を荒らげている。
やはり普通の人間ではこの速度はきついか。

「弥生!!!!なんで、、、、?あの先輩がそんなに好き?ただのタラシ野郎じゃない!!!もう死んだって言うのに!!!」

環奈はすごい形相で弥生に叫ぶ。
顔は真っ赤だ。
私がこの前環奈が触れてきた時に
拒んでしまったからだろう。

弥生は素直に伝えた。

「ごめん、、ごめん、好きなの、、まだ好きなの、、!本当はこんなシステム入っていないはずなのに、、、ごめんごめんね、、、、!」

弥生は泣きながら、謝る。

頭ではわかっていてもやはり弥生は先輩のことが忘れられなかったのだ。長い間アンドロイドとして生きてきた弥生は、いつの間にか人工知能が発達しすぎたのであろう。


「っち、、、だから殺してやったのに、、、
弥生だって隠すの手伝ってくれたじゃん!!!!
弥生は弥生は弥生はわたしだけ
わたしだけわたしだけわたしだけわたしだけわたしだけわたしだけわたしだけわたしだけわたしだけ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

そう言って環奈は弥生の体を手に握っている包丁でめった切りにした。
弥生はこれ以上抵抗しなかった。


その中弥生はボソリと呟いた。

「次は弥生ではなく、
普通の女の子として生まれてきたいなあ。」

だが、そんな声は環奈には届かず、
弥生はバタりと意識をてばなした。


「私だけの弥生、、、、ははは、わたしだけ!
あれ、せっかくのお誕生日なのに
弥生ちょっと可愛くないよ、、
お花とかどうかな。
もぉ☆可愛くしちゃうぞ!!!☆」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私は泣きじゃくっていた。
まさか、私が全ての元凶とは。
あんなに殺したいと思っていた犯人が自分とは。

その時

「ここにいたのか!!!見つけたぞ!!!」

銃を持った兵隊のような数人の男がこちらに向かってきた。
そして発砲した。

バンッ!

「きゃあああああああああああ!
咲真くん!!咲真くん!!!」

私は慌てて咲真くんの腕を確認した。
そこには血ではなく
いろんな回線が剥き出しになっていた。

「言っただろ。この街はアンドロイドだけだって。
弥生には細胞やら血やら取り組まれてるが他はただのロボットだ。
くそあいつ。また俺の事修理する気かっつーの。」

そう言って咲真くんは私の肩に置いている手に力を込めて行った。

「いいか。お前はお前だ。お前がきちんとお前のことを知らないといけないんだ。
次こそちゃんと弥生を守ってやれ!」

私は泣きすぎて言葉を発さなかったが
こくんと頷いた。

「ははっ。もうお前と弥生の仲裁はこりごりだ!」

そう咲真くんが言った時

バァン!!!

咲真くんの頭が撃ち抜かれた。
そして咲真は倒れた。

そこで私はプツンと何かが切れて倒れた。


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