an HappyBirthday letter
ピエロの存在
1999-6-5
今日は土曜日。学校も休み。
あれから数日だったというのに、
テレビをつければ弥生のことでいっぱいだった。
なんでも"変死体"だったらしくて。
土曜日の朝は''もえるんるん戦士 ''がある大事な朝なのに、私はそんなのもお構い無しにノートにひたすら今の状況を整理していた。
弥生が亡くなったのは5月27日。
皮肉にも弥生の誕生日だ。
死因……不明 (変死体、、?)
死んだ場所……不明
死んだ時間……不明
ここまでに情報がないと何も始まらない。
とりあえず弥生の家に行くことにしよう。
実は5月28日に1度弥生の家には行っているのだ。
まあ警察がいて入れるどころか
近づけもしなかったけどね。
弥生の家までは自転車で10分ぐらいでつく距離だ。リュックには携帯 財布 手帳 ペン
このくらいでいいだろう。
そう思ってた立ち上がった時、視界にハサミが入った。私は立ったまま、無言で考えそっとリュックの中に入れた。
私が玄関で靴を履いていると
「どこに行くの」
お母さんが後ろから声をかけてきた。
私は怪しまれまいと、
「限定版ボックスを取りに行くだけだよ~(笑)
いや~待ったかいがあったよね~」
といつもの調子で答えた。
自分で言うのもなんだが自然だった。
これはうまくいったとおもった。
しかし、チラッとお母さんの顔を覗くと
お母さんは今にも泣きそうな顔していた。
「そう……。
もう!変なの買ってたら承知しません!!」
泣きそうな顔を必死にこらえ私と同じ調子で返してきた。多分お母さんには気づかれてんのかな~。さすが母親って感じするけど……。
ごめんねお母さん 私は どうしても許せない。
「よし!準備オッケ~!いってきまーす」
そう言って私はお母さんに笑いかけた。
大丈夫だよって気持ちが伝わってほしかった。
「行ってらっしゃい」
そう言ってお母さんも手を振ってくれた。
それを私は確認して玄関から外に足を踏み出した。
私の愛車。メアリー号はいつも私の通学を助けてくれるピンクの自転車だ。
前のかごが潰れているのは 颯くんの好感度が上がったからと調子に乗っていたら電柱にぶつかったからだ。
と、情けない思い出はさておき、
私はサドルにまたがった。
はやく、弥生についての情報を……!
いつもより力強くこぎ続けていたせいか、
家には5分弱で着いた。
いや、いつもが遅いのか。
これだから引きこもりは。
ピンポーン。
……
ピンポーン。
……でない。
まぁ、これは少し予想していた。
弥生のお母さんは少し精神的に弱い。
そんな状況なのに娘が死んだとなると精神はズタボロだろう。かわいそうに……。
だが、''そんな''ことに構ってやれるほど私は優しくない。
「弥生まま~!環奈だよ~!」
ドアを叩きながら叫んだ。近所迷惑なんて考えてない。弥生のお母さんがでるまで呼び続けるだけだ。
5分くらいたった頃だろうか。
ガチャ。
「……環奈ちゃん……?」
弥生のお母さんがでてきた。
計画よりは早かったな。
30分はかかるだろうと考えていたのに。
「弥生まま!大丈夫?……なわけないよね」
そう言って私は顔を下げる。そう。これでいいの。
「環奈ちゃん……!環奈ちゃん!!!」
そう言って弥生のお母さんは私を抱き寄せた。
やっぱり。これはいける。
「弥生は……?どこなの?会いたいよ……」
私は顔を手で抑え肩を震えさせる。
まだ……。まだだ、まだ誘導させなくちゃ。
「ねぇ……知ってるんでしょ?弥生のことについて……。教えて、教えてよ、教えて!!!」
そう言いながら弥生のお母さんの方を揺らす。
フィニッシュ。これで完璧。
ほらね、弥生のお母さんの顔が曇ってきた。
「入って……。」
そう言って弥生のお母さんは私を家に招いた。
私は ありがとう……とつぶやき弥生のお母さんについて行った。
ここで待っていてと座敷に通された。
出されたお茶に手もつけず黙って
私はひたすら待っていた。
大丈夫。どんなことを言われても受け止めてやる。
「待たせてごめんね……」
そう言いながら弥生のお母さんは私と机を挟んで座った。そして1通の手紙を私の前にだした。
ごく普通の手紙。ありきたりな手紙。
「これは……?」
私は弥生のお母さんに問いかける。しかし既に弥生のお母さんは泣き出し始めてしまった。
おいおい、まだ聞きたいことあるんだけど……
そう思いながらも出された手紙に手を伸ばした。
するとバッ!!!っと手を掴まれた。
すごい力で掴まれているため手が痛い。
「ねぇ……?環奈ちゃん信じてるからね……」
そのとき今日初めて目が合った。
目は腫れすぎて充血している。髪はボサボサ。
いつから整えていないんだろうと思うくらい。
醜い顔……。弥生とは大違い。
そんな思いを飲み込み私は弥生のお母さんの手にそっと手を重ねて
「大丈夫……。信じてほしいな……。」
と微笑みかけた。そうすると弥生のお母さんは手を離した。さっさと離せっての。
そうして私は封筒を開き手紙を出した。
その中身は
---------------------
今井弥生ちゃんへ♡
誕生日おめでとう!
やっとこの日が来たね……!
自分はずっと待ってたんだよ?
弥生ちゃんは優しいからみんなに勘違いされちゃうんだよね。弥生ちゃんが好きなのはこの自分だけなのにね……?♡
今日プレゼントを持っていきますね♡
ピエロより
ニガサナイヨ
---------------------
私はふぅと息をつき手紙を閉じ封筒に戻した。
そして、問いかけた。
「これはどうしたんですか?」
弥生のお母さんはそっと口を開き語り出した。
あまりにも話が途切れ途切れでわかりにくかったが、とりあえず内容はこうだ。
朝 いつも起きて降りてくる時間になかなか降りてこないのにおかしいと思い部屋に呼びに行くと
そこには胸に真っ赤なアザミが無数に刺さっていた弥生が倒れていた。
急いで抜こうとしたがなかなか抜けず、
どうしようと慌ててながらも、
とりあえず救急車を呼んだそうだ。
そうして救急車を待っているときに、弥生の近くに置いてある"手紙"をみつけたらしい。
警察に渡すことが一番だとは思ったが、警察を信じきることができず渡せなかった、と。
そう言って弥生のお母さんはこう続けた。
そ病院で言われたのは
死因は胸の刺し傷からの出血死であるということ。
弥生はその前日の晩、弥生の母と一緒に夕飯を食べたので午後8時までは生きていたのは確実らしい。
しかし、ここで1番驚くべきことは
アザミがただ刺さってあるわけではなく、
''縫い付けて''あったことだ。
なるほどこれが変死体ってわけか。
わざわざここまで手のかかることをするか。
そこまでにした犯人の思いは?
私はいろんな考えが頭をよぎった。
少し時間を置いて、私は弥生のお母さんに歩み寄り肩に手を置き そっと一言いった。
「きつかったですね……」
そう言うと弥生のお母さんは
雪崩落ちて泣き叫んだ。
へぇ……。まだ涙でるんだ……。
その後私は弥生のお母さんをなだめて
弥生の家をあとにした。
家に帰りつきノートに今日の情報をまとめた。
死因……出血死(胸にアザミが縫い付け)
死んだ時間……夜8時~翌日の朝7:15
死んだ場所……弥生の部屋
情報があったな。良かった。
でも、ほんと不愉快だったな。
弥生の''母''は。
正直、私は弥生のお母さんが嫌いだ。
言った通り弥生のお母さんは精神的に弱かった。
だから、弥生は実の母に振り回されていた。学校が終わったらすぐ帰らなくては暴れ出す。
ずっと目の届く所にいなければ暴れ出す。
言うことを聞かなければ暴れ出す。
ほんとにクズだった。
なら父親は……?
弥生のお父さんは既に二人の元から去っていた。これが私達2人が仲良くなった理由の一つでもあった。私の場合自分のお母さんに不満なんてひとつもなかったが互いに父親がいないという立場で気があったのだろう。
はっと気づくと手を握り締めすぎて手には爪のあとができ血が出ていた。
だめだめ !まだ調べないといけないことたくさんあるんだから!
"まだ"だめだよ!
そう自分の気持ちに区切りをつけ、
私は寝ることにした。
今日は土曜日。学校も休み。
あれから数日だったというのに、
テレビをつければ弥生のことでいっぱいだった。
なんでも"変死体"だったらしくて。
土曜日の朝は''もえるんるん戦士 ''がある大事な朝なのに、私はそんなのもお構い無しにノートにひたすら今の状況を整理していた。
弥生が亡くなったのは5月27日。
皮肉にも弥生の誕生日だ。
死因……不明 (変死体、、?)
死んだ場所……不明
死んだ時間……不明
ここまでに情報がないと何も始まらない。
とりあえず弥生の家に行くことにしよう。
実は5月28日に1度弥生の家には行っているのだ。
まあ警察がいて入れるどころか
近づけもしなかったけどね。
弥生の家までは自転車で10分ぐらいでつく距離だ。リュックには携帯 財布 手帳 ペン
このくらいでいいだろう。
そう思ってた立ち上がった時、視界にハサミが入った。私は立ったまま、無言で考えそっとリュックの中に入れた。
私が玄関で靴を履いていると
「どこに行くの」
お母さんが後ろから声をかけてきた。
私は怪しまれまいと、
「限定版ボックスを取りに行くだけだよ~(笑)
いや~待ったかいがあったよね~」
といつもの調子で答えた。
自分で言うのもなんだが自然だった。
これはうまくいったとおもった。
しかし、チラッとお母さんの顔を覗くと
お母さんは今にも泣きそうな顔していた。
「そう……。
もう!変なの買ってたら承知しません!!」
泣きそうな顔を必死にこらえ私と同じ調子で返してきた。多分お母さんには気づかれてんのかな~。さすが母親って感じするけど……。
ごめんねお母さん 私は どうしても許せない。
「よし!準備オッケ~!いってきまーす」
そう言って私はお母さんに笑いかけた。
大丈夫だよって気持ちが伝わってほしかった。
「行ってらっしゃい」
そう言ってお母さんも手を振ってくれた。
それを私は確認して玄関から外に足を踏み出した。
私の愛車。メアリー号はいつも私の通学を助けてくれるピンクの自転車だ。
前のかごが潰れているのは 颯くんの好感度が上がったからと調子に乗っていたら電柱にぶつかったからだ。
と、情けない思い出はさておき、
私はサドルにまたがった。
はやく、弥生についての情報を……!
いつもより力強くこぎ続けていたせいか、
家には5分弱で着いた。
いや、いつもが遅いのか。
これだから引きこもりは。
ピンポーン。
……
ピンポーン。
……でない。
まぁ、これは少し予想していた。
弥生のお母さんは少し精神的に弱い。
そんな状況なのに娘が死んだとなると精神はズタボロだろう。かわいそうに……。
だが、''そんな''ことに構ってやれるほど私は優しくない。
「弥生まま~!環奈だよ~!」
ドアを叩きながら叫んだ。近所迷惑なんて考えてない。弥生のお母さんがでるまで呼び続けるだけだ。
5分くらいたった頃だろうか。
ガチャ。
「……環奈ちゃん……?」
弥生のお母さんがでてきた。
計画よりは早かったな。
30分はかかるだろうと考えていたのに。
「弥生まま!大丈夫?……なわけないよね」
そう言って私は顔を下げる。そう。これでいいの。
「環奈ちゃん……!環奈ちゃん!!!」
そう言って弥生のお母さんは私を抱き寄せた。
やっぱり。これはいける。
「弥生は……?どこなの?会いたいよ……」
私は顔を手で抑え肩を震えさせる。
まだ……。まだだ、まだ誘導させなくちゃ。
「ねぇ……知ってるんでしょ?弥生のことについて……。教えて、教えてよ、教えて!!!」
そう言いながら弥生のお母さんの方を揺らす。
フィニッシュ。これで完璧。
ほらね、弥生のお母さんの顔が曇ってきた。
「入って……。」
そう言って弥生のお母さんは私を家に招いた。
私は ありがとう……とつぶやき弥生のお母さんについて行った。
ここで待っていてと座敷に通された。
出されたお茶に手もつけず黙って
私はひたすら待っていた。
大丈夫。どんなことを言われても受け止めてやる。
「待たせてごめんね……」
そう言いながら弥生のお母さんは私と机を挟んで座った。そして1通の手紙を私の前にだした。
ごく普通の手紙。ありきたりな手紙。
「これは……?」
私は弥生のお母さんに問いかける。しかし既に弥生のお母さんは泣き出し始めてしまった。
おいおい、まだ聞きたいことあるんだけど……
そう思いながらも出された手紙に手を伸ばした。
するとバッ!!!っと手を掴まれた。
すごい力で掴まれているため手が痛い。
「ねぇ……?環奈ちゃん信じてるからね……」
そのとき今日初めて目が合った。
目は腫れすぎて充血している。髪はボサボサ。
いつから整えていないんだろうと思うくらい。
醜い顔……。弥生とは大違い。
そんな思いを飲み込み私は弥生のお母さんの手にそっと手を重ねて
「大丈夫……。信じてほしいな……。」
と微笑みかけた。そうすると弥生のお母さんは手を離した。さっさと離せっての。
そうして私は封筒を開き手紙を出した。
その中身は
---------------------
今井弥生ちゃんへ♡
誕生日おめでとう!
やっとこの日が来たね……!
自分はずっと待ってたんだよ?
弥生ちゃんは優しいからみんなに勘違いされちゃうんだよね。弥生ちゃんが好きなのはこの自分だけなのにね……?♡
今日プレゼントを持っていきますね♡
ピエロより
ニガサナイヨ
---------------------
私はふぅと息をつき手紙を閉じ封筒に戻した。
そして、問いかけた。
「これはどうしたんですか?」
弥生のお母さんはそっと口を開き語り出した。
あまりにも話が途切れ途切れでわかりにくかったが、とりあえず内容はこうだ。
朝 いつも起きて降りてくる時間になかなか降りてこないのにおかしいと思い部屋に呼びに行くと
そこには胸に真っ赤なアザミが無数に刺さっていた弥生が倒れていた。
急いで抜こうとしたがなかなか抜けず、
どうしようと慌ててながらも、
とりあえず救急車を呼んだそうだ。
そうして救急車を待っているときに、弥生の近くに置いてある"手紙"をみつけたらしい。
警察に渡すことが一番だとは思ったが、警察を信じきることができず渡せなかった、と。
そう言って弥生のお母さんはこう続けた。
そ病院で言われたのは
死因は胸の刺し傷からの出血死であるということ。
弥生はその前日の晩、弥生の母と一緒に夕飯を食べたので午後8時までは生きていたのは確実らしい。
しかし、ここで1番驚くべきことは
アザミがただ刺さってあるわけではなく、
''縫い付けて''あったことだ。
なるほどこれが変死体ってわけか。
わざわざここまで手のかかることをするか。
そこまでにした犯人の思いは?
私はいろんな考えが頭をよぎった。
少し時間を置いて、私は弥生のお母さんに歩み寄り肩に手を置き そっと一言いった。
「きつかったですね……」
そう言うと弥生のお母さんは
雪崩落ちて泣き叫んだ。
へぇ……。まだ涙でるんだ……。
その後私は弥生のお母さんをなだめて
弥生の家をあとにした。
家に帰りつきノートに今日の情報をまとめた。
死因……出血死(胸にアザミが縫い付け)
死んだ時間……夜8時~翌日の朝7:15
死んだ場所……弥生の部屋
情報があったな。良かった。
でも、ほんと不愉快だったな。
弥生の''母''は。
正直、私は弥生のお母さんが嫌いだ。
言った通り弥生のお母さんは精神的に弱かった。
だから、弥生は実の母に振り回されていた。学校が終わったらすぐ帰らなくては暴れ出す。
ずっと目の届く所にいなければ暴れ出す。
言うことを聞かなければ暴れ出す。
ほんとにクズだった。
なら父親は……?
弥生のお父さんは既に二人の元から去っていた。これが私達2人が仲良くなった理由の一つでもあった。私の場合自分のお母さんに不満なんてひとつもなかったが互いに父親がいないという立場で気があったのだろう。
はっと気づくと手を握り締めすぎて手には爪のあとができ血が出ていた。
だめだめ !まだ調べないといけないことたくさんあるんだから!
"まだ"だめだよ!
そう自分の気持ちに区切りをつけ、
私は寝ることにした。