離婚前提策略婚。【改訂版】
「華乃ちゃん、寝室あっち」


笑いを堪えながら、あいつはわたしが向いている方と反対側を指差す。


「っ──。」


む、ムカつく、ってより恥ずかしい…。


「おやすみ!入って来ないでね!」


寝室に入り勢い良くドアを閉めた。

その途端、急激に顔が熱くなる。


わ、わたし、キスしちゃった!崇憲以外の人と!しちゃったよ!どうしよう…!

なにがどうしようなのかもわからないけど、何とも言えない感情に包まれる。


崇憲への罪悪感なんてまるでない。だってわたし達は付き合ってるわけでもないし、崇憲がわたし以外の女の子とキスをするのは日常茶飯事だもの。

かと言ってあいつとキスをして嬉しい気持ちなんて皆無だし、この感情が何なのかさっぱりわからない。


とにかく胸の鼓動が半端なくて、寝る気になんて全くなれない。気持ちを落ち着かせようとベッドに腰掛け、口を両手で押さえそのまま横に倒れる。


新婚生活一日目。

たった一度のあいつとのキスで、眠れない夜から始まった。
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