離婚前提策略婚。【改訂版】
恋の始まり

華乃と崇憲

あいつと別れてわたしは区役所に向かった。戸籍を確認すると本当に「神田華乃」になっていた。

愕然としながら崇憲の部屋に向かう。

実家には行けない。結婚のことを聞かれてボロが出るとまずいし、事実上は新婚だから実家にはあまり帰らない方がいいはず。


崇憲のアパートの駐車場に車を停め外に出ると、どこからかドアが開く音が聞こえた。

目を向けるとそれは崇憲の部屋のドアだった。そこから女の人が。


「またね。楽しかった」

「俺も」

「すぐ会いたくなるかも」

「いつでも来いよ」

「いいの?」

「アキならいいよ」

「ありがとう!電話するね!」

「ん」


──!


キスをして笑顔で手を振り去って行く女性。


…見なきゃ良かった。来なきゃ良かった。


車に乗り、行く宛てもないけれどエンジンをかける。


こんなことで傷ついちゃだめ。泣くもんか。前にも同じようなことあったじゃない。気にするな。

感情を押さえつけ、少し涙目になりながら発進させようとする。


──え?


右側からコンと音がしたと思ったら、窓ガラスに手を当て、外からわたしを見下ろす崇憲がいた。
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