離婚前提策略婚。【改訂版】
嬉しくて流すので精一杯だよ。

今までのわたしとは違うの。こんなただ繋ぎ止めようとしているような言葉に、もう揺れたりしない。

少しでもブレると本当に不倫になりそうだよ。ちゃんと終わらせないといつまでも進めない。


「ここでいいでしょ?」

「…俺、結構本気でお前を必要としてたんだけど」

「そうなの?嬉しいわ」

「真面目に聞けよ。もう他の女と遊ばない。お前だけにする。だから俺といろよ」


真剣にわたしを見つめる崇憲。

騙されちゃだめ。勘違いしちゃだめ。こんなことを言って平気で裏切る男なんだから。


「気持ちがなくてもそう言ってもらえるのは嬉しい。でもわたし結婚しちゃったんだよ?」

「そんなんすぐ別れろよ。お前が幸せを感じられるのは俺といる時だけだろ。俺もお前といる時が一番安心するんだ」

「…何を言ってもだめだよ。早く降りて。八時過ぎてる」

「華乃──…」

「降りて!さよなら!」


崇憲の顔を見れない。見たら負けそうな自分がいる。


「…俺、待ってるから。お前が戻ってくるの。いつまでも待ってるから。……じゃあな」


ドアが開き崇憲は降りて行く。すぐに車を走らせ、路地裏に入りブレーキを踏んだ。

涙が溢れて何も見えなくなり、ハンドルを握りしめ顔をうずめる。


崇憲からあんな言葉が出るとは思わなかった。前のわたしなら鵜呑みにしてまた関係を続けていただろう。


例え愛し合っていなくても結婚して良かった。初めてそう思えた。


最低な男と別れられて、一歩前に進めたから。
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