離婚前提策略婚。【改訂版】
声といい話し方といい、さっきまで一緒にいた崇憲そのもの。

余りにありえない偶然に、非現実すぎるとパニック状態になる。


手にしていたグラスが汗をかいているのもわからず、ただ耳だけが異様に敏感に働く。むしろわたし自身が冷や汗と似たような汗をかいていた。


本当は聞かない方がいいのなんてわかりきっていた。わたしの中で綺麗とは言えないけれど終われて思い出にしたかった崇憲を、これ以上悪い印象で記憶に残しておきたくなかった。


それなのに体が硬直したかのように動かず、会話を聞き入ってしまう。また傷つくのは目に見えてるのに。

そんなわたしをあいつがずっと見つめているのなんて、知る由もなかった。


「でもほんと珍しいよな。いつもなら崇憲、失敗合コンの後はすぐ帰ってたじゃん」

「そうそう、帰って他の女に癒されるんだよな？」

「今日は？帰らないってことは癒やしてくれる女、いなくなったのか？」

「うるせーな、普通にいるっつーの。今日はお前らと飲みたい気分だったんだよ」

「絶対嘘だろ。はっきり言えよ、慰めてやるから」

「だから違うって」

「あの子は？崇憲にいつも貢いでた女いたじゃん。名前と見た目が合わない女」
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