離婚前提策略婚。【改訂版】
お店を出るとあいつは肩から手を離した。


「あんたまだ飲んでなかったよな」

「え?うん…」

「ドライブ行こ」

「え?……うん…」


車に乗りエンジンをつける。


「どこに行くの?」

「どこでもいい。あの男との思い出の場所以外なら」

「──」


何も考えず車を発進させる。


崇憲との思い出の場所なんてあのアパートしかない。二人でどこかに出掛けたりしたことがなかった。

あいつからドライブなんて言い出したのに何も話さない。沈黙の中、行く宛てもなく車を走らせる。


言いたいこと、聞きたいこと、絶対あるはずなのに。どうして何も言わないの。

あいつから何か言わないとわたしも何も言えない。だから沈黙は続いていく。


どこに行けばいいかわからず、学生の頃に友達とよく見に行った夜景スポットに行った。

車を停めたところで、ようやくあいつが口を開いた。


「思いっきり男と来るとこだろ」

「わたしは女友達としか来たことない」

「女同士で来て何が楽しいんだよ」

「女は楽しめるの!」

「華乃はああいう感じの男が好きなんだ?」


──。
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