離婚前提策略婚。【改訂版】
「……いらない」


こいつ、本当に素直じゃねぇな。


「──っ!」


寝ながら俺に背を向ける華乃を後ろから抱きしめる。

嫌なら振り払え。そこまで強く力を入れてないんだから。


「……おやすみ。……ありがとう」


ったく、初めから素直だったらもっと可愛げがあるってのに。


──馬鹿な女。俺が救ってやる価値があるか?入籍したから仕方ないと思って助けてやったけど、色々と腹立たしい点がある。


なによりムカつくのがあんなたいしたことねぇ男にはまって、俺には見向きもしないことだ。


誰がどう見ても俺の方がいい男だろうが。見た目も中身も。

結婚だってキスだってしたのに、こいつの中であの男と俺との差はなんだ。

こいつの中で俺はあんなクズみてぇな男に負けてる。


ふざけんな。


何もかもが初めてだからなんだってんだよ。こんないい男が一緒に生活してるってのに、あんな男なんか即行忘れて俺をすぐ好きにならないのはおかしいだろ。


俺がいい男過ぎるから好きになれないのか?卑屈な女は身分をわきまえて初めから好きにならないってやつか?


例えそうだとしても、俺が本気を出して落ちなかった女はいない。こいつだって同じだ。


あの男に負けるのは、絶対に許せない。
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