離婚前提策略婚。【改訂版】
「ちょ、なにすんの!」


龍成は気にせずわたしの履いている靴を脱がし、持っていた靴を履かせる。


「無理矢理じゃない!どうしてそこまで…」

「見てみろよ」

「え…」

 
ちょうど向かい側にあった鏡を見ると、思った以上にわたしを上げてくれるその靴が目に入る。


うわ…嬉しいかも……。


「めちゃくちゃ似合ってる」


鏡を見て自信満々に笑う龍成。


「…それ、本心?」

「当たり前だっつーの。俺が選んだんだ。外すわけない」


ちょっとした憧れだったタイプの靴。こんな風に無理矢理じゃなきゃ履くことなんてなかった。


わたしにも合うんだ…!


こんな些細なことがわたしにはとても大きくて、少しだけコンプレックスが緩くなった気がした。


……龍成のお陰で。


「次行くぞ」

「わっ!」


急に手を引かれ立ち上がると、ヒールの高さについていけずよろけてしまった。


「危なっかしいな」
 
「──!」


不覚にも龍成に抱きとめられてしまう。顔が熱く赤くなっていくのが自分でもわかった。


「……」


わ、絶対気づかれてる。恥ずかしいったらないわ。


下を向いて誤魔化そうとすると、龍成は何も言わず、ただ繋ぐ手に力を込めた。
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