離婚前提策略婚。【改訂版】
なんでお姉ちゃんの言うことはすんなり聞くわけ?わたしのことなのに…。


「でもお父さん、断ったら会社にいられなくなるんじゃ」

「お母さんは黙ってなさい!」

「あ…」


そっか、そうだよね。社長の奥さんからの縁談を断ったら、お父さん、左遷とか最悪リストラなんてされるかも。


でもだからと言って、見ず知らずの人と結婚なんてできないよ…。


~♪♪♪♪♪


しんとなった空気の中、固定電話が鳴り、お母さんが席を立ち受話器を取った。


「はい、桜庭です。──あ、どうもこんにちは!主人がいつもお世話に……え、ええ、まあ………そうですの。……わかりました。伝えます。はい、こちらこそよろしくお願いします。はい、失礼いたします」


お母さんは受話器を置くと、暗い表情をしながら元の場所に戻る。


「お母さん?」

「…社長の奥様からだった」

「え?!」

「なんて!?」

「…社長の息子さんが、華乃と二人きりで会いたいみたい」

「は!?」


ふ、二人きりって…。


「今日の夜、ここにタクシーを送るからそれで来てほしいって」

「な、なにそれ!行き先は!?」

「わかんない」

「わかんないじゃないでしょ!怖すぎ!」
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