離婚前提策略婚。【改訂版】
「だから大丈夫だって」

「こ、この格好で?」

「そこまでハイレベルなとこじゃねぇから。充分だ」

「マナーとかわかんないけど」

「いらねぇよ。普通にしてたらいい」

「…わたしといて恥ずかしい思いしない?」


こういったお店に不慣れなわたし。

こんなナリの龍成でもこのお店を前に平然としている。わたしがなにかやらかしたら、龍成にまで迷惑がかかってしまう。

あとから文句を言われるのはとてつもなくイヤ。だから本当に入っていいのか躊躇してしまう。


そんなわたしを見て龍成は優しく微笑み、わたしの手を引いた。


「それでは奥様、参りましょうか」

「──。」


わ、やばい、照れる。こんなこと龍成は冗談でしてるだけなのに。


ていうか予約無しで入れるのかな。入ってすぐウエイターとなにやら会話をする龍成に不安が募る。


そのくせにわたしは、初めて入るお店の中を食い入るように観察していた。


店内は言わずもがな満席状態。おしゃれな雰囲気の中、大きな窓ガラスからは宝石のような夜景が広がって見える。すごく綺麗だけど離れて見るくらいで精一杯で、窓側にだけは絶対に行きたくないと願った。


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