離婚前提策略婚。【改訂版】
どこか陰があるような、それでいて安心したような表情の麻友ちゃん。

この様子だと俺の思惑通りか?


「いや、仕事は仕事だろ」


勝手に動かれて華乃の親父に余計なことを言われたら困るんだよ。昨日は華乃に実家に連絡させたら、親父も麻友ちゃんも何もしなかったみたいだけどな。


「…こんなに真面目にしているのにわたしったら…。昨日はごめんなさいね」


よし、さすが麻友ちゃんだ。


「いや、わかってくれればいいから」

「あなた、本当に華乃さんを愛しているのね。女性に対してここまで誠実になるなんて見直したわ」


……あ い し て る 。


なんとも胸に響かない言葉だ。


「だろ?」


やべ、思いっきり無表情になっちまった。


「お父様が戻られたら、もう一度ちゃんと挨拶に行くわ」

「…親父が行くって行ったのか?」

「ええ、もちろん。時間が取れ次第、再度伺うと仰っていたわ」


すげぇ豹変。これ、本心で言ってんのか?

昨日の二人の態度からこんなに変わるなんて、何か裏があるとしか思えない。特に親父がもう一度挨拶に行くだなんて言うか?

あの親父はそんなに柔軟な考えはしていない。俺の言うことなんか元から聞かねぇんだから。
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