離婚前提策略婚。【改訂版】
麻友ちゃんが昨日の俺の言葉を親父に伝えたところで、親父の考えが変わるわけがない。あの調子じゃ結婚をよく思ってなんかいない。

それなのに…。

親父のやつ、どういうつもりだ?


「じゃあ今日も頑張りなさい。この間のテスト、思ったより出来てたわよ。でも完璧にしないとね」

「なぁ、麻友ちゃ…」

「お父様が帰られる前に、少しはお父様のお手伝いができるようになれればいいわね。あと橘常務があなたと食事に行きたいと仰っていたわ。いつお誘いがきてもいいようにしておいてね」


そう言いながら麻友ちゃんはドアを開け、社長室を出て行こうとする。


「どこ行くんだよ」

「来客があるのよ。また今日もテストをしますからね」

「…あ、そ」


──それから俺は特に変化のない、同じような日を数日過ごした。

親父も麻友ちゃんもこれといった動きはなく、それが怪しくも見えたが、向こうが動かない以上俺も何も出来ない。


違うところで策略が始まっているだなんて、俺は気づくはずがなかった。
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