離婚前提策略婚。【改訂版】
「あんたはそれが許されない立場だって自分でわからないのか?ま、だから今まで遊んでこれたんだろうけど。これは専務だけじゃないからな。社長がいなくチャンスの上に、馬鹿息子が入社したんだ。使わない手はない。社長自身にはスキャンダルも不祥事もない。あんたは遊びまくってて会社の事情なんか知らないだろうけど、あんたのせいで、あんたの行動一つで、痛手を喰らうのは会社なんだよ」

「──」


──思いの外、俺はショックを受けていた。


会社がどうなろうと俺には関係ない。もちろん継ぐ気は毛頭ない。


それなのになんでこんなにショックなんだ?

俺のせいで親父が解任されたらなんだってんだよ。親父に情なんて一切ない。

俺は好きなように生きるだけ。したいように、何にも縛られず自由でいたいだけ。


…でもそれは、誰かの不幸せの上にできている。誰かが俺の犠牲になっている。


そんなの、本当の自由だろうか。本当の幸せなんだろうか。


何にも惑わされないはずなのに、自分にブレるはずなんてないのに、自分にとって何が正しいのかわからなくなってしまった。俺自身に足元をすくわれたみたいだ。


──なぜかこの時、無性に華乃に会いたくなった。
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