離婚前提策略婚。【改訂版】
車に乗り一人マンションへ帰る。

二人でも無駄に広いその空間は、一人だと孤独感で押しつぶされそうな勢いだ。

ジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めソファーに座るも、ズルズルと横になり、額に腕をあげ大きく溜め息をつく。


テーブルの上には、ここに帰る前に区役所から持ってきた離婚届。

手を伸ばしその紙を取り、まじまじと見つめる。

紙切れ一枚で夫婦にも他人にもなれる。この紙一枚で、俺と華乃は何の関係もなくなってしまう。


二度と会えなくなるわけじゃない。

でも何か口実が無い限りは会えないだろう。


いや、あいつが俺を好きだと言えばいいんだ。そうしたら、離婚なんてせずにこのまま……。


…このままでいたいのかよ、俺は。


何をふざけたことを考えてんだよ。いい流れで会社を辞めれたんだ。ごちゃごちゃ言われずに済むじゃねぇか。

これで離婚すれば、俺は当初の目的通り自由の身だ。


なんだよ、計画通りじゃねぇか。期間だって半分で済んだし計画より上出来だ。何の文句もない。


……でもよくよく考えると何だか腑に落ちない。
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