離婚前提策略婚。【改訂版】
無理だろうな。それをわかってこっちは言ってるんだよ。


「マジでお引き取り下さいお母様。お願いします」


嫌がらせかってくらいに低く頭を下げる。

時間がまずい。まだ出てくるなよ、華乃。


「──っ……。」


無言のまま、麻友ちゃんが去って行く音がする。玄関のドアが閉まると俺は頭を上げた。


…なんだか急に疲れたな。


ソファーに座り、もたれながら天井を仰ぐ。


もう来ねぇだろ。今週中には出て行くって言ったし、俺がいる限り麻友ちゃんや親父を華乃に近付かせねぇ。

これ以上華乃を傷つかせてたまるか。


「──龍成?」

「お、無事洗えたか」


洗面所から華乃が出てくる。

タイミング的にギリギリか?最悪なところは聞こえてなかったよな?


「うん。ねぇ、今誰か来てた?」

「なんで」

「女の人の声が聞こえたから」
 
「テレビだよ。今消したとこ」

「あ、そう。龍成もお風呂入ったら?」
 
「そうする」  

「わたし先に寝るね」

「また髪濡れたまま寝るのかよ」

「いいでしょ。ドライヤー好きじゃないんだもん」
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