離婚前提策略婚。【改訂版】
「ふざけてません」

「マジでどこ行ってたんだよ」

「どこだっていいでしょ」

「あのなぁ」


まともな会話にならねぇ。なんでこんなことで妬くんだよ。


「ほっといて。わたしは一人で楽しむから」

「華乃!」


痺れを切らし、俺は華乃の手を取った。


「離して!」

「離しません」

「離せ!」


どんなに振り払おうとしたって無理だ。

ただでさえ我慢してんだから。


「んな怒ることないだろ」

「…馬鹿野郎」

「は?」


急に俯き、小さく発した華乃の言葉。

その言葉はさざ波の音にかき消され、俺の耳には届かなかった。


─と思ったら。


「ふざけんなバカヤロー!わたしが怖い目にあってるってのに、女の子といちゃついてやがって!もう勝手にしやがれこんちきしょう!」


周りに響くくらいの大声で叫ばれ呆気に取られる。

こんちきしょうってすげー言葉だな。


「か、華乃ちゃん?もっとわかるようにお兄さんに説明してくれるかな?」


なぜか一瞬、迷子になった子供を迎えに行った親の気持ちがわかったような気がした。
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