離婚前提策略婚。【改訂版】
──ま、今日は大人な俺が折れてやるか。

や、いつも俺だよ。優しすぎだな。なんだかんだ言って俺、華乃に甘くないか?


ふっと息を吐いて華乃の目線に合わせ屈み、頭を撫でる。


「さ、触るな」

「助けてやれなくて悪かったな。一人で頑張ってお利口さんでした」

「…子供扱いすんな」


顔を下に向け、華乃は俺と目を合わせないようにする。


「ぶはっ、どうやったってガキにしか見えねぇよ」

「最低。せっかくいい気分だったのに」

「もうすぐ日が暮れる。帰る前にちゅーしとく?」

「龍成って、ちゅー好きだね。この変態が」

「なんで変態なんだよ」

「誰とも見境なくちゅーするところが」

「見境なくだ?んなわけねぇだろ」

「じゃあなんでわたしに…っ」


華乃が視線を上げたことで、二人ではっとする。


それはすぐにでも本当にキスが出来るほどの距離。

以前の俺なら流れで何の気もなしにしていただろう。


でも、今は──。
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