離婚前提策略婚。【改訂版】

「…なんで華乃が疲れてんだよ。運転してんの俺だろ」

「……」

「華乃ちゃーん」

「……」

「俺まで眠くなるだろうが。助手席は寝たら駄目なんだぞ」

「……」


─まじで寝たのか？


信号が赤になり、ブレーキを踏み華乃を見る。


…うわ、本気で寝てやがる。そしてなぜか微妙に笑っている。
　
早過ぎだろ。いつものことだけど。


ムカつく位に幸せそうな寝顔。起きている時の、素直じゃないガキ丸出しの女からのこのギャップが、馬鹿みたいに俺の心を鷲掴みにする。


その寝顔に時間も忘れ見入っていると、後ろからクラクションの音が響く。

─やべ、いつ青に変わったんだ。運転中だってのに、何やってんだよ。


アクセルを踏み発進させる。


…なんか最近の俺、ださくね？自分で自分がひどく情けなく思える。

前の俺は何の疑問も無く自分に大きな自信を持っていた。何にも動じない絶対的な芯のようなものが、自分の中にあったから。


──そうだ。以前の俺は誰にも縛られず自由でいることが、生きる意味だと思っていた。