離婚前提策略婚。【改訂版】
「華乃、起きろ」

「……」

「華乃!」

「…ん…。龍成?」

「着いたから降りろ」

「…え、もう着いたの?」

「もうって、何時間寝てたと思ってんだよ」

「…今、何時?」

「夜11時」

「──うわ!もう?!」


寝ぼけながら飛び起きる華乃。髪ぼっさぼさだな。


「降りろよ」

「うん…」


車から降りマンションに入る。寝ぼけている華乃は朝のことなど忘れ、手を繋いでエレベーターに乗る。


足取りもおぼつかない。どんだけ爆睡してたんだよ。

部屋に入ると華乃はソファーにドサッと座り込んだ。


俺的にはちょうど良かった。

頭を抱えながらうなだれる華乃を横目に、俺はしまっておいた大きめの封筒を棚から取り出す。


「…うー、まだ眠い…。このまま寝ちゃおうかな…」

「これで目が覚めるか?」

「─え?何?こんな時間に目が覚めても……」


華乃の目の前にあるテーブルに置いた一枚の紙。

それが俺のサイン済みの離婚届だと気づいた華乃は、大きく目を開き息を飲んだ。
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