離婚前提策略婚。【改訂版】
そう自分に言い聞かせても、涙は止まってくれない。

声を押し殺すことで精一杯。


──昨日龍成が『いじめる』って言ったのは、このことだったのかな。


…元から愛のない結婚だったでしょ。ていうか龍成に愛情を求める方が間違ってるんだよ。

龍成を好きになったわたしが馬鹿だっただけ。


なんて愚か。なんて無様。

こんなの本当にピエロだよ。


龍成に気持ちを伝えたところで届くわけもない。むしろ優しかった龍成が、出逢った頃のような冷たい目を向けるかもしれない。

そんなの耐えられない。

優しくされることに慣れてしまったから、傷つくことにひどく臆病になる。


龍成が優しいまま別れるのが一番だ。お互いイヤな思いをするよりも。


また涙を拭い、少ない荷物をまとめていく。



愛のない結婚が愛のある離婚になるなんて、わたしは知らずにいたかった。
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