離婚前提策略婚。【改訂版】
──荷物を持ち、泣いたことがばれないようにリビングに行くと、龍成はソファーに座ったままだった。


「…帰るね」


もう二度とこの部屋に来ることはない。思い出に浸ることさえ苦しくなりそうで、わたしは早く実家に帰りたかった。


「ん、お疲れ。外まで送る」


立ち上がりわたしに向かってくる龍成。


だめ。来ないで、近づかないで。

気持ちが暴走しておかしくなりそう。


「いらない。平気だから」


龍成から顔を背け、玄関に向かう。


「荷物きついだろ。エレベーターもあるし、時間も遅い」


ついてこないでよ。本当にいいんだから。


「平気だって」

「本当に?」

「もう、なんで嘘つかなきゃなんないの!大丈夫だから!」


…わたしって最後まで馬鹿だ。龍成は心配して言ってくれてるのに。


でもこんなに近くにいたら気持ちが抑えきれなくなる…。


「…じゃ、気をつけて帰れよ。なんかあったらすぐ連絡しろ」

「なんもないって。明日二時ね。おやすみ」


龍成の顔を見ないように玄関を出た。
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