離婚前提策略婚。【改訂版】
「なんかあったらすぐ連絡しろよ」

「それ昨日も聞いたんだけど。なんかってなによ」

「なんでもいいから。俺の計画に付き合ってもらったんだから、少しは礼を」

「ぷ。なにが礼よ。それなら真剣な謝罪の言葉を聞きたいわ」


本当に龍成の口から聞きたいのはそんな言葉じゃない。


「わ る か っ 」

「ふざけんなばーか」

「華乃ちゃん?俺の精一杯の謝罪を」

「うるさい、黙れハゲ。ほら着いた」

「おいこら、口悪すぎだっての」

「着いたから降りてよ」

「このやろ」


文句を言いながらも車から降りる龍成。


…着いちゃった。区役所、近すぎだよ。遠回りすることもできない自分が嫌になる。

もう提出するだけだ。


涙が出そうになるのを唇を噛んでどうにか堪える。


「華乃?」


車に乗ったままでいるわたしを、龍成は運転席のドアの窓を軽くノックしながら呼ぶ。

龍成の方を見ないように車から降り、駐車場から区役所まで歩いた。


…結構きついな。

無理かも。二人で離婚届を出しにいくなんて…。


区役所の入り口の手前でわたしは立ち止まった。


「…華乃?」
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