離婚前提策略婚。【改訂版】
微笑みながら一言告げると、龍成は背を向けて歩いていった。

その背中に小さく手を振る。

もう片方の手に握られている龍成の指輪の存在を思い出し、手のひらを広げ見つめた。


予定より早く任務完了しちゃったね。この指輪もお疲れ様でした。


──なんて指輪をまじまじと見ていると、中に何かの文字が刻まれていることに気づく。


あれ?龍成の指輪には何も彫ってないって言ってたよね?


不思議に思いながらその文字を確認した時、堪えていたはずの涙が溢れてしまった。

もう泣かないって決めたのに。どうしてわたしはこうも意志が弱いの。


龍成の指輪には、しっかりとわたしの名前が刻まれていた。
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